京都大学所蔵資料でたどる文学史年表: 三国志演義
《この作品について》
三国志演義 さんごくしえんぎ
『三国志演義』は中国の歴史小説です。全 240 編で、作者は羅貫中です。14 世紀末から 15 世紀初に作られたと考えられています。
正史『三国志』(晋の陳寿著)をもとにして作り上げた通俗物語で、前半では、劉備・関羽・張飛の三人が兄弟の契りを結ぶところから始まり、この 3 人と軍師諸葛孔明が力を合わせ蜀を攻め取り、魏・蜀・呉の三国分立の状態になり、劉備が蜀の皇帝になるという話が語られています。後半は、劉備らの死後、諸葛孔明の魏・晋との戦いにおける活躍とその死、そして、蜀が滅び晋が天下を統一するまでの話が書かれています。
正史の『三国志』では、魏が正統の王朝とみなされているのに対し、『三国志演義』では、蜀を正統の王朝とみなし、物語の主人公を劉備・関羽・張飛・諸葛孔明にしたところが特徴です。 彼ら以外にもたくさんの英雄が活躍します。本作は、戦いの場面が迫力満点に描かれ、登場人物の造型も面白く、魅力あふれる作品といえるでしょう。
《画像&資料について》
上の画像は京都大学文学研究科に所蔵されている『演義三国志』です。明の万暦 38 年(1610)に出された楊●[門+虫(ビン)]斎刊本です。明代には刊本が多く出され、日本にも伝来しました。京都大学文学研究科には、万暦 39 年鄭雲林刊行の『演義三国志伝』も所蔵されています。このように伝来した『演義三国志』をもとにして、天竜寺の僧たちが日本語に訳した『通俗三国志』(元禄 2(1689)~ 5 年刊)が出され、多くの人々に読まれました。その他、小説や演劇にも取り入れられ、『三国志演義』の物語やここで活躍する英雄たちは、日本でも広く知られ、人々に愛されていきました。
●[文学研究科・楊ビン斎刊本]
●[文学研究科・鄭雲林刊本]
《もっと知りたい》
【関連書籍】
●三国志 1 - 8 / 吉川英治著(吉川英治歴史時代文庫)
●三国志演義 / 井波律子著(岩波新書 ; 新赤版 348)
●三国志の風景 : カラー版 : 写真紀行 / 小松健一著(岩波新書 ; 新赤版 407)
●三国志と日本人 / 雑喉潤著(講談社現代新書 ; 1637)
<京都大学所蔵資料でたどる文学史年表>
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