京都大学所蔵資料でたどる文学史年表: 山東京伝

《この作品について》


山東京伝 さんとうきょうでん - 江戸時代後期


 山東京伝 (1761-1816) は、江戸時代を代表する戯作者です (「戯作」は、江戸時代後半に作られた小説類の総称) 。本名岩瀬醒、俗称を京屋伝蔵といい、「江戸城紅葉 "山" の "東" に住む "京" 屋の "伝" 蔵」ということから、「山東京伝」という筆名をつけたといわれています。
 18 歳で画家としてデビューし、20 歳頃から黄表紙と呼ばれる絵入読み物を書きはじめます。『御存知商売物』(1782 刊)、『江戸生艶気樺焼』(1785 刊)といった黄表紙は大評判を得、京伝は一流作家といわれるようになりました。
 さらに、遊郭内部の様子を描く洒落本を出し、これもベストセラーとなります。が、1791 年、風俗を乱す本を取り締まる出版物取締令に触れてしまい、手錠をかけたまま 50 日間生活させる「手鎖の刑」に処せられます。
 その処分の後、京伝は、江戸京橋の南(現在の銀座一丁目)に紙製煙草入れ店を開きました。彼がデザインした煙草入れは大流行し、江戸の有名ブランド店として大繁盛します。同時に、読本、合巻と呼ばれる多くの小説を執筆し、江戸戯作界の第一人者として活躍し続けました。
 1816 年9月7日、京伝は胸痛の発作を起こし、56 歳でこの世を去りました。現在、両国回向院に、同じく戯作者であった実弟の山東京山とともに眠っています。

 

山東京伝似顔(京都大学文学研究科蔵、細田栄里画)
山東京伝似顔(京都大学文学研究科蔵、細田栄里画)



《画像&資料について》

 上の画像は、細田栄里による、山東京伝の肖像画です。30 代のころの京伝を描いたものと思われます。煙管を持っているのは、彼が煙草入れ店を商っていたことに関係するでしょう。着物の紋は巴山人紋といいます。京伝は、幼い頃父親にこの形をした銅製の印鑑を貰い、非常に大切にしていました。彼が書いた作品には、署名の下に、この巴山人印が押されています。

●[山東京伝似顔・文学研究科所蔵]


《もっと知りたい》

【関連書籍】
山東京伝 / 小池藤五郎著(人物叢書, 吉川弘文館)
山東京伝と江戸のメディア / 田中優子講師(NHK人間大学)
江戸生艶気樺焼 / 山東京伝作(黄表紙 ; 川柳 ; 狂歌, (日本古典文学全集))

 

京都大学所蔵資料でたどる文学史年表

 

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