京都大学所蔵資料でたどる文学史年表: 堤中納言物語

《この作品について》


堤中納言物語 つつみちゅうなごんものがたり - 平安時代後期


 堤中納言物語は、10 編の物語が集められている短編集です。平安時代物語文学におけるさまざまなパターンや技法・表現が、総まとめのように並んでいる、と言ってもいいかもしれません。
 花桜折る少将: 桜の荒宿で美しい姫君を垣間見た少将、こっそり連れ出そうと忍び込んだまではよかったが、実は・・・。
 このついで: ある雨の日、3 人の女性が自分の恋愛話をそれぞれ語りだす。
 虫めづる姫君: 毛虫が大好きな姫君、気味悪がる親たちに「外見で判断するな」と反論。そんな彼女に恋は芽生えるのか?
 ほどほどの懸想: 葵祭の日の少年と少女の出会い。二人の恋がきっかけとなり、互いの主人同士にも恋が芽生えるというお話。
 逢坂こえぬ権中納言: 姫君に熱心にアプローチする中納言、彼の恋は成就するのか?
 貝合わせ: 少女たちが貝合わせの準備をしているところに、通りがかった蔵人少将。母のないひとりの姫君に同情した彼は、観音様になりすまし・・・。
 思はぬ方にとまりする少将: "少将" と "権少将"、まぎらわしい名前の男性二人。少将は姉、権少将は妹と付き合っていたが、使いの者がまちがえて・・・。
 はなだの女御: 二十人の女房たちがそれぞれの主人を草木にたとえて和歌を詠む。
 はいずみ: 妻と浮気相手、夫が選ぶのはどっち。
 よしなしごと: 「これから山寺にこもります。つきましては身のまわりのものをお借りしたいのですが・・・」という手紙。
 平安時代にはこのような短編物語がたくさん存在していました。そのうち人気のあるものや続篇が待ち望まれたものが、延々と書き継がれていき、源氏物語のような長編物語に成長していった、と考えられています。

 

堤中納言物語「はいずみ」から。
堤中納言物語「はいずみ」から。
夫の家から出て行くことになった妻。悲しみにくれて和歌を詠み、馬に乗って出立。



《画像&資料について》

 上の画像は、伴信友校蔵書におさめられている堤中納言物語の写本です。
●[堤中納言物語・伴信友校蔵書]

 

《もっと知りたい》

【関連書籍】
落窪物語 ; 堤中納言物語 / 三谷栄一, 三谷邦明, 稲賀敬二校注・訳 (新編日本古典文学全集)
堤中納言物語 / 三角洋一全訳注 (講談社学術文庫)

 

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