京都大学所蔵資料でたどる文学史年表: 和泉式部

《この作品について》


和泉式部 いずみしきぶ - 平安時代


 和泉式部は平安時代の女流歌人です。生没年は不詳です。長徳2年(996 年)頃、橘道貞と結婚します。二人の間に生まれた娘の小式部も歌人として名を残しました。また、道貞と不和になって後の、為尊親王や帥宮敦道親王と恋愛は有名で、その経緯は彼女の歌や『和泉式部日記』から知ることができます。その後、中宮彰子の女房として仕え、藤原道長の臣藤原保昌と再婚し、歌人として活躍しました。
 まれにみる美貌と歌才の持ち主であり、さらには恋多き女性として、のちに様々な伝説が生まれ、語られています。

 

和泉式部集(谷村文庫) 冒頭 春
和泉式部集(谷村文庫) 冒頭 春
「春かすみたつやおそきとやま川のいはまをくゝるをときこゆなり」



《画像&資料について》

 上の画像は、谷村文庫に収められている『和泉式部集』です。
 『和泉式部集』には大きく分けて、四種類の本があります。これは後土御門院宸翰本と呼ばれるものです。宸翰本(しんかんぼん)とは、天皇や国王が直接自筆で書き記した書物のことをいいます。この本は、御土御門天皇が自分で書き写した本、ということになります。本書の表紙見返しには、「後土御門院和泉式部集全部(印)」という極書(鑑定書)が貼付されています。(画面右側。余談ですが、このように極書(きわめがき)が付いているもの、価値のあるもの、という意味で「極め付き」という言葉がうまれました。)
 本書には、150 首の歌が収められています。四季や恋の歌のほか、娘の小式部を亡くしたのち、その思いを詠んだ歌などがあります。鳥と花の図柄が織り込まれた布張りの表紙に、金紙の見返しが付けられ、流麗な文字で書かれた、大変美しい本です。

●[和泉式部集・谷村文庫]

 

《もっと知りたい》

【関連書籍】
和泉式部日記 : 現代語訳付き / 近藤みゆき訳注(角川ソフィア文庫 ; 46)
蜻蛉日記 和泉式部日記 / 円地文子訳(ちくま文庫)
生方たつゑの蜻蛉日記・和泉式部日記(集英社文庫 ; わたしの古典 5)

【Web】
Broken Moon -和泉式部と王朝恋歌-

 

京都大学所蔵資料でたどる文学史年表


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