京都大学所蔵資料でたどる文学史年表: 方丈記

《この作品について》


方丈記 ほうじょうき - 鎌倉時代初期


 方丈記は、鴨長明 (1155 - 1216) が書いた随筆文学です。400 字原稿用紙 25 枚程度の短編で、枕草子・徒然草とならんで日本古典文学の三大随筆にあげられています。
 鴨長明は、もともと下鴨神社の神官の生まれであり、かつ歌人として当時活躍していました。が、出世の道が断たれたことなどをきっかけに出家、世間から離れて日野(京都郊外)に引きこもり、隠遁生活を送りました。その日野の "方丈" の庵、即ち 1 丈四方 ( = 5.5 畳) 程度のわびしい住まいの中で執筆されたのが、この方丈記です。
 方丈記に一貫して流れているのは「無常観」といわれる思想です。実際に起こった大火事・地震・飢饉などをなまなましく描写し、人の命や人生・社会のはかなさ、不安定さ、うつろいやすさを説き、その苦悩を訴えています。その苦悩から逃れるために世間から離れるのが隠遁生活であり、彼らは隠者・世捨て人などと呼ばれています。漢文をベースにした長明の力強い文章が、彼の苦悩をよりはっきりと表現していると言えるでしょう。
 方丈記は隠者文学の代表的な作品のひとつです。

 

方丈記(谷村文庫)の冒頭。
方丈記(谷村文庫)の冒頭
「行河のながれは絶えずしてしかももとの水にあらず。」



《画像&資料について》

 上の画像は、谷村文庫におさめられている方丈記の刊本(古活字版)です。

●[方丈記]

 

《もっと知りたい》

【関連書籍】
方丈記・徒然草 / 稲田利徳[編集・執筆] ; 山崎正和[エッセイ] (新潮古典文学アルバム ; 12)
方丈記 / [鴨長明] ; 簗瀬一雄訳注 (角川文庫)

【Web】
方丈記(青空文庫)

 

京都大学所蔵資料でたどる文学史年表

 

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