京都大学所蔵資料でたどる文学史年表: 日本永代蔵

《この作品について》


日本永代蔵 江戸時代


 『日本永代蔵』は、井原西鶴作の浮世草子です。貞享5年(1688)に刊行されました。各巻5章、6巻 30 章から成っています。
 諸都市の町人の成功や失敗談が書かれた短編小説集で、西鶴町人物の最初の作品です(井原西鶴の項参照)。町人たちの暮らしぶりが西鶴流の軽妙な筆致で書かれています。全編通して、金銭にまつわる喜悲を中心として描き、節約を勧めているところが特徴といえるでしょう。また、諸国の風俗が多く盛り込まれており、これによって当時の文化を知ることができます。経済を主題とした、日本で最初の作品という点でも、本作品は重要な意義をもっています。

 

『日本永代蔵』(一般貴重書)巻1・目録
『日本永代蔵』(一般貴重書)巻1・目録



《画像&資料について》

 上の画像は『日本永代蔵』の冒頭目録です。本書の末尾には「貞享5年」の刊記がつけられていますが、貞享5年に出された初版本ではなく、天保以降の再版本です。6巻 30 章であった初版から、5章省いた5巻 25 章が収録されています。初版本のダイジェスト版ともいえるでしょう。話の並び順も変えられており、1・2巻は上方、3巻は江戸、4巻は九州や岡山など、5巻は北陸や静岡などというように、初版ではばらばらに配置されていたものを、地域ごとに分類再編しています。
 画像のように、本作品の目録は、各章で語られる店をのれんの意匠を用いて示しており、このようなところにも趣向が凝らされた魅力ある作品です。

●[日本永代蔵 6巻・一般貴重書]


《もっと知りたい》

【関連書籍】
井原西鶴集 / 井原西鶴 [著] 3(小学館 日本古典文学全集)
経済小説の原点『日本永代蔵』 / 谷脇理史著(清文堂出版, 2004)
日本永代蔵 / [井原西鶴著] ; 暉峻康隆訳・注(小学館ライブラリー)

 

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