京都大学所蔵資料でたどる文学史年表: 義経記

《この作品について》


義経記 ぎけいき - 室町時代


 義経記は、源平合戦で活躍したヒーロー・源義経を主人公とした物語です。
 義経にまつわる話は『平家物語』にも収録されていますが、そこでは詳しく扱われなかった伝説・エピソードが、この義経記にはふんだんに盛り込まれています。牛若丸と呼ばれた幼少期の奥州や京都・鞍馬での様子、弁慶・静御前・忠信たちとの関わり、奥州へ逃げ落ちてから自害するまでの様子など。人々の間に広まっていた義経伝説が、集大成のようにまとめられています。その一方で、『平家物語』のほうで詳細に扱われていた源平合戦のシーンがほとんど出てこない、というのもひとつの特徴です。
 『平家物語』などとくらべると、"悲劇のヒーロー" や "貴公子" のようなキャラクター付けが強く、活躍当時から英雄として人気だった義経を、さらに美しく魅力的に描いている、といえるでしょう。扱われている話題も、例えば弁慶の生い立ちや静御前とのロマンスを描くなど、エンターテイメントとしての性格が強いともいえるのではないでしょうか。
 かねてから高かった義経人気は、この作品の登場によってさらに拍車がかかりました。御伽草子・謡曲・浄瑠璃・歌舞伎など、義経伝説はあらゆる文芸の中で庶民に親しまれ、「判官びいき」(英雄でありながら悲劇の運命をたどった義経 → 形勢の悪いほうを応援する)という風潮もうまれました。
 

義経記 巻3「弁慶義経に君臣の契約申す事」から。
義経記 巻3「弁慶義経に君臣の契約申す事」から。
清水寺の舞台の上で、衆人環視の中、斬りあう義経と弁慶。義経が弁慶を打ち負かし、弁慶は家臣となる。

 

《画像&資料について》
上の画像は、貴重書として所蔵されている古活字本です。江戸時代初期(元和・寛永年間)に作成されたと考えられます。彩色された挿絵もついています。
●[義経記・古活字本]


《もっと知りたい》

【関連書籍】
義経記 / 梶原正昭校注・訳 (新編日本古典文学全集 ; 62)

【Web】
義経記(義経伝説-源義経デジタルミュージアム)


京都大学所蔵資料でたどる文学史年表


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