2021-01-21
琵琶の演奏を家業として朝廷に仕え、豊臣政権とも密接な関係を築いた菊亭家(今出川家)に伝えられた「菊亭文庫」を新たに公開しました
「菊亭文庫」は、大正10-11(1921-1922)年に故菊亭公長侯爵から永久寄託されて以来、附属図書館貴重書庫に保管され、利用に供されてきましたが、現在の所有者のご厚志により、新たな関係資料とともに寄贈され、このほど正式に附属図書館所蔵資料としての登録が完了しました。今回デジタル化・公開したのは、今出川・菊亭家の系譜を今に伝える肖像画掛軸、家系図、特に貴重な歴史記録である『言継卿記』合計6点です。2021年1月21日現在、京都大学貴重資料デジタルアーカイブの公開件数は、19,436タイトル、1,614,552画像となりました。
▼菊亭文庫
今出川家は、西園寺実兼(1249-1322 さねかね)の四男兼季(1281-1339 かねすえ)を祖とする清華家(太政大臣に就任できる公家の家柄)の一つです。琵琶の演奏を家業として朝廷に仕え、第12代晴季(1539-1617 はるすえ)は、豊臣秀吉に関白職を斡旋して朝廷との調整役を務めるなど、豊臣政権と密接な関係を築いたことで知られています。明治時代に入ると侯爵に叙せられ、第26代脩季(1857-1905 ゆきすえ)が別号としてきた「菊亭」に改姓しました。
肖像画には、第22代実種(1754-1801 さねたね)、第23代尚季(1782-1810 なおすえ)、第24代公久(1806-1836 きんひさ)、第25代実順(1832-1864 さねあや)が描かれています。
『[菊亭家系図]』は巻子装で、表裏にわたって今出川・菊亭家の年表、系譜、家伝、官職への昇進年齢が詳細に記述されており、同家の全貌を一覧することができます。
『言継卿記』(天正4年)は、戦国期の公家山科言継(1507-1579やましな ときつぐ)の日記で、菊亭文庫に含まれるのは天正4(1576)年の記録です。6月12日の記述からは、当時大坂本願寺を包囲していた明智光秀が現在でいう赤痢に罹患して伏せっていたことがわかります。
本資料のデジタル化・公開は、資料寄贈者及び京都大学貴重資料デジタルアーカイブ基金への寄付者の皆様のご篤志により実現しました。厚く御礼申し上げますとともに、今後も貴重な資料を大切に保管して後世に伝え、同時に学術研究・文化振興貢献のために活用できるよう、尽力いたします。