2024-11-13

西田幾多郎が長男の死を悼んで寄贈した本を公開しました

西田幾多郎(にしだきたろう; 1870-1945)氏は日本を代表する哲学者の一人ですが、私生活では度重なる家族の死や病に苦悩した人でもあります。

大正9(1920)年6月、旧制第三高等学校の卒業を間近に控えていた長男・謙氏が、腹膜炎のため23歳で急逝します。大正9年11月、西田氏は「為亡兒謙記念」(亡児謙の記念と為(な)す)と墨書した哲学書6タイトルを旧制第三高等学校図書館(現在の京都大学吉田南総合図書館)へ寄贈しました。
そのうち3冊には、三高の制服姿の謙氏の写真が貼り付けられ、自作の短歌あわせて6首が書きつけられています。「すこやかに二十三まですごし来て夢の如くに消え失せし彼」「徒(いたづら)にむくろ残りて人並にのみて食ひて笑ひてぞ居る」などの短歌には、最愛の子を失った深い悲しみが率直な言葉で綴られています。

西田の墨書

Werke : Auswahl in sechs Bänden Bd.1 見返しと扉

寄贈された図書は、当時は一般図書として利用されていましたが、現在は貴重書に指定されています。西田氏は、息子の名前を記した本が母校の図書館で末永く保存され、人々の目にふれることを願ったのかもしれません。「哲学の動機は「驚き」ではなくして深い人生の悲哀でなければならない」と語った哲学者の、最大の悲哀があらわれた資料です。

2024年11月13日現在、京都大学貴重資料デジタルアーカイブの公開件数は、25,510タイトル、2,154,091画像となりました。
(今回の電子化では、資料本文は対象とせず、書き込み部分のみデジタル化・公開を行いました)


※参考
京都学派アーカイブ「西田幾多郎「悲哀の哲学」の現場」より、「西田幾多郎三高寄贈本について」(2024年11月13日確認)

 

所蔵館レコードIDタイトル請求記号
吉田南総合図書館RB00034320[西田幾多郎遺墨](Kritik der reinen Vernunftより)210||||179||三高洋
RB00034321[西田幾多郎遺墨](Werke : Auswahl in sechs Bänden Bd.1より)210||||180||三高洋
RB00034322[西田幾多郎遺墨](Präludien : Aufsätze und Reden zur Einführung in die Philosophie Bd.1より)210||||181||三高洋
RB00034323[西田幾多郎遺墨](Einleitung in die Philosophieより)210||||182||三高洋
RB00034324[西田幾多郎遺墨](Der Gegenstand der Erkenntnisより)210||||183||三高洋
RB00034325[西田幾多郎遺墨](The four historical conceptions of beingより)210||||184||三高洋