京都大学所蔵資料でたどる文学史年表: 徒然草

《この作品について》


徒然草 つれづれぐさ - 鎌倉時代末期


 徒然草は、吉田兼好 (1283-1350) が鎌倉時代末期に書いた随筆集です。全243段の短編随筆がおさめられ、枕草子・方丈記とならんで日本古典文学の三大随筆にあげられています。
 兼好は、もともと吉田神社の神官の生まれであり、かつ歌人としても当時の "和歌四天王" として活躍していました。貴族の家庭教師を務め、宮廷にも出入りするなどしていましたが、20代後半頃に出家し、隠者・世捨て人として京都郊外で隠遁生活を送りました。その隠遁生活の中で執筆されたのが、この徒然草です。
 方丈記と同じく、徒然草の背景にあるのは「無常観」といわれる思想で、人の命や人生・社会のはかなさ、不安定さ、うつろいやすさを訴えています。ですが、方丈記とあきらかに異なるのは、そのうつろいやすい世の中だからこそ如何に意義を見出すか、名声や欲にとらわれることなくポジティブに生きるか、ということを訴えている点です。
 また、短編の各随筆で扱われている素材・テーマは、多種多彩をきわめています。無常観・仏教に関することもさることながら、芸術に関すること、和歌・文学に関すること、四季・自然に関すること、政治・経済・医学・博物学、人生論・処世術、噂話や説話、正しい言葉の使い方や、ちょっとした豆知識に至るまで。著者・兼好がいかに博覧強記・好奇心旺盛かつ読書家であったかがあらわれています。
 自分の思うこと・考えること・感じることを、好きなように書き綴っていく、という自由な文学形式が、人々に好まれたのでしょう、とくに江戸時代には数え切れないほど多くの文化人・知識人たちが、似たような態度での随筆を書き著しました。

 

徒然草絵抄から。
徒然草絵抄から。
宴会で酒によって、鼎 (3本足のつぼ) を頭からかぶった仁和寺の法師。抜けなくなってしまい、医者に行くが、手の施しようがない。



《画像&資料について》

 上の画像は、元禄 4 年 (1691) に京都で出版された挿絵つきの『徒然草絵抄』です。
 京都大学貴重資料デジタルアーカイブでは、計 5 点の徒然草写本・刊本を公開しています。
●[徒然草絵抄]
●[寛文12年刊]
●[菊亭家旧蔵本 写]
●[菊亭家旧蔵本 刊]
●[正保2年刊]
 

《もっと知りたい》

【関連書籍】
徒然草 / [吉田兼好著] ; 三木紀人全訳注 (講談社学術文庫)
徒然草 / 久保田淳著 (岩波セミナーブックス ; 105 . 古典講読シリーズ)

【Web】
仁和寺

 

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