京都大学所蔵資料でたどる文学史年表: 年中行事

《この作品について》


年中行事 ねんちゅうぎょうじ


 年中行事とは、一年を通じ、四季の移り変わりに伴って行われる行事のことです。日本では古くから様々な行事が行われていましたが、特に平安時代、公家の世界では年中行事が盛んに行われていました。 この中には、五月の端午の節句や七月の七夕など、形は少々異なりますが、現在も続いているものも多くあります。
 年中行事は、当時の文学にも取り入れられており、『うつほ物語』『源氏物語』などでは、これらが物語展開の上で重要な役割を果たしています。また、鎌倉時代以降は、武家の年中行事が盛んになります。公家の行事を踏まえながら、武家特有の作法が付け加えられていきました。一方、庶民の間でも年中行事は行われており、これらの様子は、説話文学などから窺い知ることができます。
 年中行事には、時代、宮廷・公家・武家・庶民などの階層、地方、職業などによって、それぞれ独自のものがあります。四季折々のこれらの行事を軸として、人々の日常生活が回転していることから、当時の人々の暮らし、思想を知る上で、年中行事の研究は、大変重要なものといえるでしょう。

 

年中行事絵巻(京都大学文学研究科) 巻1「朝観行幸 上」
年中行事絵巻(京都大学文学研究科) 巻1「朝観行幸 上」



《画像&資料について》

 年中行事の絵画作品として、『年中行事絵巻』があります。平安時代末期、内裏での年中行事の規範として、後白河院の命によって、常磐光長が執筆したものといわれています。これが後に模写され、伝わっていきますが、中でも、江戸時代、後水尾院が住吉如慶に写させた『年中行事絵巻』が有名です。この原本は後に焼失してしまいますが、模本は現在もいくつか残っています。
 京都大学文学研究科にも『年中行事絵巻』が所蔵されています。全 13 巻で、複数の人によって神社に奉納されたものです。上の画像は、その巻1『朝観行幸 上』の冒頭です。朝観行幸とは、天皇が太上天皇(前の天皇)や、皇太后の宮(母宮)のもとに行幸し、年始の挨拶をする儀式です。本作品は所々色が塗られ、また、画中に「クロ」「金泥」など、色を指定する書き込みがあり、豪華な彩色を施す予定であったことが窺われます。江戸時代には、この他にも絵巻や洛中洛外図屏風など、年中行事に関する絵画作品が多く製作されており、現存するこれらから、当時の行事の様子を知ることができます。

●[年中行事絵巻・文学研究科所蔵]


《もっと知りたい》

【関連書籍】
年中行事絵巻 / 小松茂美編集・解説(日本の絵巻8)

【Web】
江戸時代庶民年中行事絵巻(1巻)

 

京都大学所蔵資料でたどる文学史年表

 

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