京都大学所蔵資料でたどる文学史年表: 平家物語

《この作品について》


平家物語 へいけものがたり - 鎌倉時代


 平家物語は、平安時代末期の源平内乱による平家一族の没落を描いた、長編の軍記物語です。
  第一部: 平治の乱以降、平家一門が権力を握って思うままにふるまっていたが、やがてその勢いにもかげりが見え始める。平清盛・祗王・俊寛など。
  第二部: 東国を中心に各地で源氏の武将たちが乱を起こし、ついには平家一門が京都から追い出される。木曽義仲・平忠度など。
  第三部: 源義経らによって平家一門はさらに追い詰められ、壇ノ浦で滅亡する。源範頼・源頼朝・那須与一・建礼門院など。
 諸行無常・盛者必衰・因果応報といった仏教観を中心とし、多くの武将・権力者たちが争いによって勝ち、また争いによって敗れていく様子が描かれています。平安時代末期に社会に台頭してきた武士たちの思想や行動、臨場感あふれる合戦の描写、その一方で王朝的な雰囲気を残す場面など、魅力ある人物・エピソードがたくさん描かれています。
 平家物語は、もともと琵琶法師と呼ばれる盲目の僧侶たちによって、全国各地で弾き語りされたものだった、と考えられています。小泉八雲『怪談』に出てくる耳なし芳一もこの琵琶法師のひとりです。多くの琵琶法師によって口頭で語られていたものが書き留められていることから、本によって内容が大幅に異なっていることもあります。が、語るにふさわしいリズム・躍動感あふれる文章の魅力には変わりがありません。
 琵琶法師の語りを通して全国のあらゆる人々に親しまれた平家物語は、のちに能・浄瑠璃・歌舞伎・御伽草子・読本などのさまざまな作品に題材として採用されています。また、安土桃山時代には、キリスト教の宣教師たちが日本語や日本文化を勉強するためのテキストとして、『天草本平家物語』も出版されています。現在でも、源氏物語などとならんで世界的に有名な日本古典文学のひとつです。

 

平家物語(伴信友校蔵書)から。
平家物語 (伴信友校蔵書) から。
 「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり」で知られる冒頭部分。この本文は漢文の形で書き記されている。



《画像&資料について》

 上の画像は、伴信友校蔵書におさめられている、文政 3 (1820) 年に書き写された平家物語の写本です。第 1 巻のみ。

●[(古本)平家物語 完・伴信友校蔵書]
●[平家物語 11巻・平松文庫]


《もっと知りたい》

【関連書籍】
双調平家物語 / 橋本治著
平家物語 / 牧野和夫[編集・執筆] ; 小川国夫[エッセイ] (新潮古典文学アルバム ; 13)
平家物語 (角川文庫 ; 12148 . 角川ソフィア文庫 ; 98 . ビギナーズ・クラシックス)

 

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