京都大学所蔵資料でたどる文学史年表: 能(謡)

《この作品について》


能(謡) 室町時代


 能は日本の伝統芸能の一つで、猿楽能とも呼ばれ、面を用い、脚本、演技に独自の様式を備えた歌舞劇です。古代の民俗芸能や中国から伝えられた散楽などを起源とするといわれていますが、本格的に発展したのは、南北朝・室町時代以降です。
 大和猿楽の結崎座に属していた観阿弥は、将軍足利義満の庇護を受け、京都に進出します。観阿弥はそれまでの猿楽能に幽玄性を加えて、芸術的に高めます。さらに、その子の世阿弥が、一層高度な舞台芸術に育て、夢幻能という様式を作り上げます。江戸時代になると、幕府の保護のもとで、形式が整えられて完成し、能は日本の伝統芸能として尊重されました。
 能で用いられる音曲のことを、謡(うたい)、謡曲といいます。謡の詞章は、歌舞劇である能の台本として作られたもので、世阿弥を含め多くの謡曲作者がいます。室町期、能の発展に付随して、稽古用として謡本が多く書写されてゆきます。本文右にゴマ点と呼ばれる節付けがされていることが特徴です。
 江戸時代になると、謡が民間に大流行し、謡本が多く刊行されます。これが、ますます謡の愛好者を広めることになりました。
 日本の伝統芸能である能やその音曲である謡は、その形を守りながら、現在まで受け継がれています。

 

『謡曲二十五番』より「高砂」
『謡曲二十五番』より「高砂」


《画像&資料について》

 上の画像は、「高砂」の謡本です。「高砂」は、九州の神主が、播磨の高砂の浦で松の精である老夫婦に出会う話で、祝儀性が高いことから、現在でも婚礼などの席で謡われることが多い曲です。この『謡曲二十五番』には、有名な謡曲が 25 作品収められいます。金泥が使われた美しい表紙の写本です。京都大学附属図書館には、この他にも、『項羽』、『観世流謡本』など、多くの謡本が収められています。
●『謡曲二十五番
●『項羽
●『湯谷
●『自然居士
●『観世流謡本
●『謡抄』(台林本)
●『謡抄』(光悦表紙本)


《もっと知りたい》

【関連書籍】
謡曲選 / 松田存 [ほか] 編(翰林書房, 日本文学コレクション)
マンガ能百番 / 渡辺睦子作画 ; 増田正造解説(平凡社)
竹めての能・狂言 / 三浦裕子文(小学館, 能楽入門)

【Web】
能面と謡曲
能・狂言ホームページ

 

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