京都大学所蔵資料でたどる文学史年表: 今昔物語集
《この作品について》
今昔物語集 こんじゃくものがたりしゅう - 平安時代後期
今昔物語集は、平安時代後期に編纂された、説話集です。全 31 巻に総計 1000 以上の短編物語が収録されています。そのほとんどが「今は昔・・・」という出だしではじまるのが、『今昔物語集』というタイトルの由来です。
全体は天竺(インド)・震旦(中国)・本朝(日本)の 3 部からなります。中でももっとも特徴的で印象深いのが、本朝(日本)の世俗説話です。平安時代の世相や、全国各地のさまざまな階層・立場の人々の人間像が、リアルかつあざやかに描写されています。話の内容も仏教的な教訓にとどまらず、実にバラエティに富んでいて、平安時代の説話文学の集大成といえるでしょう。
また、この今昔物語集におさめられている昔話のいくつかは、アジア各国でも伝承されていることなどが研究されています。昔話の国際的なつながりを考える上でも、重要な作品です。
これほどの集大成であるにもかかわらず、残念ながら江戸時代中頃まではほとんど知られていませんでした。が、もちろんその物語としての魅力に変わりはなく、芥川龍之介は『羅生門』『鼻』『芋粥』などの多くの作品を、今昔物語集にヒントを得て生み出しています。
《画像&資料について》
上の画像は、鈴鹿本と呼ばれている今昔物語集の写本です。現存する今昔物語集の写本の中でもっとも古いもので、国宝に指定されています。
なおこの資料については、画像だけでなく、文章のテキストも見ることができます。(資料ページの画像右側の More Information を開いてください。)
●[今昔物語集(鈴鹿本)]
《もっと知りたい》
【関連書籍】
●今昔物語集 (角川ソフィア文庫 ; 97 . ビギナーズ・クラシックス)
●寂聴今昔物語 / 瀬戸内寂聴著 (中公文庫)
【Web】
●国宝 - 今昔物語集(鈴鹿本)
●平成8年度秋季展示図録『「今昔物語集」への招待 -鈴鹿本「今昔物語集」国宝指定記念-』
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