京都大学所蔵資料でたどる文学史年表: 長恨歌

《この作品について》


長恨歌 ちょうごんか - 806


 長恨歌は、中国・唐の時代を代表する詩人・白居易が作った漢詩です。全部で 120 句からなる長編の叙事詩で、唐の皇帝・玄宗と楊貴妃との恋愛物語が語られています。
 物語は玄宗皇帝と楊貴妃との出会いにはじまり、楊貴妃がいかに美しかったかが描かれます。その後、玄宗が楊貴妃を溺愛して政治をおろそかにしているうちに、反乱が起きてしまいます。楊貴妃の死後、嘆き悲しむ玄宗皇帝は、道教の士に依頼して楊貴妃の霊の居場所を探させます......。悲劇でありながらも甘美な恋愛模様、史実に基づきつつも幻想的な展開を見せるストーリーが、当時から人々に愛されていたようです。
 日本には、『白氏文集』に収録のものとして、ほぼ同時代である平安時代に伝えられました。当時の日本の貴族たちにも大変な人気で、王朝物語に強く影響しただけでなく、和歌・漢詩の題材にも頻繁にとりあげられました。時代が移ってもその人気は衰えることなく、今昔物語のような説話、平家物語・太平記、能、江戸時代の庶民文学に至るまで、日本文学のほぼ全域でとりあげられています。特に源氏物語には、その冒頭部分からすでに長恨歌の影響が色濃くあらわれており、かつ全編にわたってにじみでています。源氏物語の日本文学史における位置の重要さを考えると、長恨歌は日本文学の発信源、といってもいいかもしれません。

 

長恨歌(清家文庫・重要文化財) 冒頭。
長恨歌(清家文庫・重要文化財) 冒頭。
美しい女性を妻にしたいという長年の願いを持っていた玄宗皇帝と、絶世の美女・楊貴妃との出会い。



《画像&資料について》

 上の画像は、室町時代後期に清原宣賢によって書写・注釈された、長恨歌及び琵琶行の写本です。本文は『古文真宝』より。清原宣賢によるたくさんの朱点や書き入れがあります。清家文庫におさめられており、国の重要文化財に指定されています。

●[長恨歌並琵琶行秘抄・清家文庫]

 

《もっと知りたい》

【関連書籍】
新十八史略 : 長恨歌の巻 / 駒田信二他著
楊貴妃 : 大唐帝国の栄華と暗転 / 村山吉廣著 (中公新書)

 

京都大学所蔵資料でたどる文学史年表


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