京都大学所蔵資料でたどる文学史年表: 蒙求

《この作品について》


蒙求 もうぎゅう - 746年


 蒙求は、746 年、唐の李瀚が編纂した故事集です。偉業を成した人のエピソードとその教訓などが、短編物語として 600 近くおさめられています。初心者向けの教科書として広まりました。
 日本には平安時代初期に伝わったと考えられています。当時、漢文や歴史・故事・教訓を学ぶための入門テキストとして大いに読まれ、貴族だけでなく僧侶・武士階級の初学者たちにとっても必読の書とされました。あまりにさかんに読まれていたため、学問所では庭の雀たちまでもが「蒙求をさえずる」などといわれるほどです。
 現代の我々にもなじみのあるエピソードが多数おさめられています。例えば、「孟母三遷」、"蛍の光窓の雪" で知られる「孫康映雪 車胤聚蛍」、夏目漱石の名前の由来となった「孫楚漱石」などは、どれもこの蒙求に掲載されているものです。
 蒙求は時代を越えて多くの日本人に読まれ、『枕草子』『源氏物語』から江戸時代の小説に至るまで、ありとあらゆる文学作品に大きな影響を与えました。

 

蒙求(清家文庫)、上巻から 「孫康映雪 車胤聚蛍」。
蒙求(清家文庫)、上巻から 「孫康映雪 車胤聚蛍」。
窓の雪あかりで勉学に励んだ孫康と、蛍の光で勉学に励んだ車胤の話。

 

《画像&資料について》

 上の画像は、室町時代後期に清原業賢・清原宣賢らによって書き写されたとされている、蒙求の写本です。たくさんの朱点や書き入れがあります。清家文庫におさめられており、国の重要文化財に指定されています。

●[(標題補注)蒙求 3巻・清家文庫(重要文化財)]
 

《もっと知りたい》

【関連書籍】
故事成句の教訓・蒙求 (知的な創造のヒント ; 3)

 

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