ヨーロッパの植物標本館に保存されている日本産植物標本の調査 Surveys of Japanese Plant specimens preserved in Uppsala, Leiden, Paris, and other European Herbaria by G. Koidzumi
- Plantae Japonicae Thunbergianae(ツュンベリー蒐集日本産植物)
- Plantae Japonicae Musei Botanici Lugduno Batavi(ライデン植物標本館所蔵日本産植物)
- Revisio Plantarum Japonicarum Musei Parisiensis(パリ自然史博物館所蔵日本産植物考)
- Index Plantarum to the Koidzumi's Plantae Japonicae Musei Lugduno-Batavi and Revisio Plantarum Japonicarum Muei Parisiensis(在蘭佛日本植物範型考索引)
- The revisions of the type specimens of Japanese plants preserved in the various herbariums of Europa and America(欧米植物標本館所蔵の日本産植物基準標本)
植物学教室の小泉源一(1883~1953)は1925年から1927年にかけてヨーロッパに滞在し、各地の植物標本館に保存されている日本産植物の基準標本の調査をおこなった。まず1925年4月にスウェーデンを訪れ、主にウプサラ大学植物標本館でツュンベリー(Thunberg)蒐集の日本産植物のタイプ標本を4ヶ月かけて詳しく調べ、引き続き、シーボルトをはじめ多くの研究者の集めた2000種以上もの日本産植物の標本を所蔵しているライデン大学と、フランシェらの蒐集になる日本産植物の標本を保存しているパリ自然史博物館において翌年の7月まで同様の調査をおこなった。さらに残りの8ヶ月でドイツ・オーストリア・スイス・フランス・イギリス各地の標本館を巡ってシーボルト、マキシモビッチらの標本を調べ、最後にグレイが研究した標本を調べるため短期間ハーバード大学をも訪れている。この一連の調査は、17~19世紀に西洋の植物学者によって記載された日本産植物の基準標本を、当時の新しい植物分類学の水準で網羅的に直接検討した画期的なもので、東アジアの植物系統分類の研究に大きな意味を持っている。
これらの調査記録は、ノートの片面に書かれ、所々で注釈や追加が対面の前ページ裏側に付されている。各巻の序文には、東アジアにおける植物調査の歴史などの詳しい記載がある(植物分類・地理 1、 1-10; 5、 1-26 の素材となっている)。本文中の多数のスケッチの他にそれぞれの巻末には40前後の図版があり、索引は「ツュンベリー蒐集日本産植物」では本文のあとに、「ライデン植物標本館所蔵日本産植物」「パリ自然史博物館所蔵日本産植物」では本文とは切り離して「在蘭佛日本植物範型考索引」として1冊に綴じられている。
(「ライデン植物標本館所蔵日本産植物」の原題にある Lugdunum Batavorum(バタヴィアのリヨン)は Leiden をさす。「ツュンベリー蒐集日本産植物」の画像は、すでに撮影されていた単色のマイクロフィルムをディジタル化したもの。)
(解説: 疋田努,井上敬 / 協力: 永益英敏,山極寿一)