大蔵一覧集 序目,10巻

本書は慶長十九年八月金地院崇傳が大蔵一覧集を進献したるを、徳川家康之を観て重要の書として二百部計り、開版すべきを命じたるを以て、駿府城内に於て工を成し、慶長二十年に竣成し、之を□寺に賜る。百二十五部摺印したりと伝ふ。従つて伝本甚だ尠し。世に之を駿府版と称す。銅製活字を用ひたるは、蓋し征韓の役に将士の将来せるものに倣ひて、新製せしめしものなり。本学蔵本には次の墨書各冊にあり。「此大蔵一覧者/太政大臣源征夷大将軍/家康賢君於河府之金城被召板師之台林/成開板矣仍国中雖請梵刹有之令印写/以別而見臨済千岩叟(宗呂)賜焉者也/維時元和元乙卯春之仲念又五蓂」又(各冊小異アリ)「此一書為付法伝衣賜岩谷者也/万法(戊戌)稔如意珠日」或又「此一書臨済隆正和尚/為伝法印附与(予)宗説者也」等の識語あり。又伝来上の一資料たるべし。惜むらくは巻十の尾二葉を脱す。(出典: 鈴鹿目録上巻 p.14)