京都大学所蔵資料でたどる文学史年表: 西行物語

《この作品について》


西行物語 さいぎょうものがたり - 鎌倉時代中期


 西行 (1118-1190) は、平安時代末期の人で、歌人として知られています。
 もともと武家の生まれで、佐藤義清という本名を持つ西行は、朝廷警護の役人としてとくに鳥羽院に仕えていました。武芸はもちろん、和歌にも秀でていた彼ですが、23 歳のときに突然出家・隠者 (世をはかなんで俗世間から離れて暮らす僧侶) となってしまい、周囲を驚かせました。出家後は京都周辺や高野山などでの修行・生活を中心としていましたが、東北・四国など全国各地を放浪する旅に出ることもあり、行く先々で西行伝説が伝え残されるようになりました。勅撰和歌集にもたくさんの和歌が入集し、自撰歌集(『山家集』)の編纂など、歌人として多くの秀作を残しています。
 宗教の人として、風雅の人として、和歌の才能を備えた人として、その魅力を発揮しながらも、なお謎につつまれたところの多い西行については、早くから説話・伝説などが生まれ伝えられるようになりました。それら説話・伝説・虚構をとりあつめつつ、史実とともに実録風にまとめられたのが、この西行物語です。鎌倉時代中期ころに成立したと思われるもので、西行の出家から没年までの半生が描かれています。

 

西行物語(奈良絵本) 巻1から。
西行物語(奈良絵本) 巻1から。
出家して仏門に入ることを決意した西行。かわいいかわいい4歳の娘が慕って寄ってくるが、これで出家への決意がにぶってしまっては、とばかりに、娘を縁側から蹴り落とす。


《画像&資料について》

 上の画像は、奈良絵本(朱・緑青・金・銀などで色彩あざやかに描かれた挿絵がついた、物語の本。室町時代半ばから江戸時代初期に作られた)の西行物語です。全4冊。
 また京都大学貴重資料デジタルアーカイブでは、この西行物語を挿絵とあらすじで楽しめるページを提供しています。

●[西行物語 4巻]
挿絵とあらすじで楽しむお伽草子 第12話 西行物語

《もっと知りたい》

【関連書籍】
西行物語 / 桑原博史全訳注 (講談社学術文庫)
西行の風景 / 桑子敏雄著 (NHKブックス 典文学アルバム)

【Web】
西行物語絵巻 文化遺産オンライン

 

京都大学所蔵資料でたどる文学史年表


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