きふね

寛平の頃、定平の中将は都中の姫君を次々妻に迎えながら、心から愛する姫君に巡り会えないことを嘆いていたが、法皇の御前で行われた扇比べの席で、扇に描かれた女房の替奏に心奪われる。扇の持ち主の伯父に、鬼国の大王の娘、こつにょが扇の女房よりも美しいと聞いた中将は、鞍馬の毘沙門天の示現によりこつにょと結ばれる。共に鬼国へ趣いた二人は、こつにょの父の大王の怒りに触れ、どちらか一人を生け賛に差し出すように申しつけられる。こつにょは自分が身代わりになることを申し出、後世を弔ってほしいと願い、生け賛にされる。中将が悲しみに沈みながらもこつにょの菩提を弔うと、その功徳でこつにょは中将の伯母の娘に転生し、二人は再び結ばれる。そのことを知った父王が二人を殺そうと日本へやってこようとするが、毘沙門天の示現による五節句の行事のために近づくことができなかった。中将と姫君は貴船の神となって衆生を済度した。(出典:『京都大学附属図書館創立百周年記念公開展示会図録』より)

本作品には奈良絵本も多く残存しているが、本書も繊細な挿絵の入った奈良絵本である。保存状態も良好で、非常に美しい本である。(出典:『京都大学附属図書館創立百周年記念公開展示会図録』より)