[蝦夷地一件]

天明4年(1784)から寛政2年(1790)までの、江戸幕府における蝦夷地問題をめぐる公文書の集成。第5冊の奥書によれば、享和元年(1801) に将軍の下問があり、評定所に収められていた「蝦夷地一件」全5巻と上下巻を合わせた全7冊を、勘定奉行菅沼定喜から寺社奉行脇坂安董が預かり、四人の寺社奉行が回覧し、分担して写本を作り、地図一袋を書院番頭松平忠明から借用し模写した、とある。本史料全5冊は、一之巻から五之巻にあたる。「蝦夷地一件」の写本として普及してきた内閣文庫所蔵本を奥書と照合すると、内閣本第一冊が二之巻、第二冊が三之巻、第三冊が五之巻、第四冊が上之巻、第五冊が下之巻に該当する。本史料に含まれる一之巻、四之巻は長らく不明とされてきた冊次であり、貴重である。(出典: 岩﨑奈緒子著『近世後期の世界認識と鎖国』)