京都大学所蔵資料でたどる文学史年表: 白氏文集

《この作品について》


白氏文集 はくしもんじゅう - 845


 『白氏文集』は、唐の白居易(772-846)による漢詩文集です。
 白居易は、字を白楽天といいます。貧しい地方官の家に生まれましたが、官吏試験に合格し、中央政治の世界で活躍しました。途中、権力者の憎しみを買い左遷されますが、のちには中央に戻り、71 歳で退官します。
 白居易は若いときから、詩文を得意とし、多くの優れた作品を作っていましたが、845 年 74 歳の時に、自らの詩文をまとめた『白氏文集』を完成させます。前集と後集に分かれ、全 75 巻、収録詩文数は 3840 編であったといわれていますが、そのうちの4巻を亡失したため、現存するのは全 71 巻で、漢詩約 2900、漢文約 770 編です。政治や社会などを批判・風刺した詩が多くありますが、人間の悲哀の情をうたいあげた感傷詩もすぐれています。玄宗皇帝と楊貴妃について詠んだ「長恨歌」は、特に有名です。日本にも早くから写本で伝わり、平安時代の貴族たちにもてはやされました。『枕草子』に『白氏文集』が登場し、『源氏物語』が「長恨歌」を踏まえているなど、平安時代の文学に大きな影響を及ぼしています。
 白居易は、『白氏文集』完成翌年の 846 年に、75 歳でその生涯をとじました。

 

『[新楽府] 巻3,4』(一般貴重書) 冒頭「七徳舞」
『[新楽府] 巻3,4』(一般貴重書) 冒頭「七徳舞」


《画像&資料について》

 上の画像は『白氏文集』の写本です。巻子本仕立てで、所々に朱墨点が施されており、鎌倉末期に写されたものと思われます。巻3、巻4のみ所蔵しています。『白氏文集』の巻3、巻4は、「新楽府」と名づけられた詩が収められている巻です。白居易が得意とした、当時の政治や社会を批判した作品群(諷諭詩)に属しますが、五言詩、七言詩といった普通の漢詩の形式によらず、前の時代である漢代の歌謡の形式を持っていることが特徴です。全部で50首収められています。
 また、谷村文庫にも『白氏文集』があります。これは、元和年間(1615 ~ 1623)に刊行された古活字版の『白氏文集』で、巻六十五と六十六のみ所蔵しています。
●[[新楽府] 巻3,4・一般貴重書]
●[[白氏]文集 巻4(正和二年写)・一般貴重書]
●[白氏文集 巻第65,66・谷村文庫]


《もっと知りたい》

【関連書籍】
白居易 / 白居易 [著] ; 高木正一注(岩波書店, 新修中国詩人選集)
白楽天詩集 / 白楽天 [著] ; 武部利男編訳(平凡社ライブラリー ; 258)

 

京都大学所蔵資料でたどる文学史年表



Copyright 2004. Kyoto University Library