〈南原梁氏の準戶口（戸籍証明書）について〉

〈南原梁氏の準戶口（戸籍証明書）について〉
<RB00020509>「1801年、梁學魯準戸口」から<RB00020539>「1824年、梁鳴國準戸口」までは、漢城府に居住する南原梁氏４代にわたる準戶口39通である。内訳は、梁應民（梁應旻）14通（1738 - 1783）、梁應漢（梁應民の異母兄）１通（1753）、梁廷燦（梁廷藎、梁應民の子）8通（1765 - 1792）、梁學魯（梁廷燦の子）6通（1801 - 1819）、梁鳴國（梁學魯の子）10通（1821 - 1849）である（表参照）。

〇準戶口（戸籍証明書）について
戸籍は3年に一度の式年に作成され、3年前の前回の先例により、漢城府より準戶口が戸主に発給される。本来の戸籍制度では、戸主が戸口単子2通を作成し、官に提出、官と戸主が1通ずつ保管したが、朝鮮時代後期には、戸主が準戶口に相当する文書を提出し、官はそれを台帳に写し、官印を押し、堂上、郞廳 、監董官が花押を書いて、戸主に返却するよう簡素化された。記載事項は、住所（東西南北中５部の部名、坊名、契洞名、統と戸の番号。統、戸の番号は別筆で後から記入され、空欄の場合も多い）、戸主と妻の氏名、年齢、生年、本貫、戸主の職業、身分、戸主と妻の四祖（父、祖父、曾祖父、外祖父）の姓名、官職、身分、外祖父の本貫、奴婢がいる場合には、その名前、年齢、生年、父母の情報である。子供はある年齢以降に記載されるか、またはまったく記載されない。たとえば梁應民の子の梁廷燦は、父の準戶口にはまったく記載がなく、弟の廷爀のみ記載され、廷燦は1765年以後、別途戸主として準戶口が発給されている。また梁廷燦（梁廷藎）の子の梁學魯以下3名は、1780年に初めて父の準戶口に現れる。準戶口には朱の官印のほか、墨印「吉挾 字改印」が押されているが、「吉」は「周」の略字で、誤字、脱字があった場合、文書の周囲部に訂正字を書くのが「周」、文書の中で書くのが「挾」である。訂正はなければ、「挾」と「字」の間の空白に「無」を入れるが、本文書にその例はない。

〇南原梁氏について
初代の梁應民の1738年での官職は扈衛軍官、1765年以降、朝奉大夫（文官従四品下）、行司圃署別提となり、その後また扈衛軍官にもどり、最後はまた朝奉大夫、行司圃署別提となる。扈衛軍官は、仁祖反正（1623）の時に設置された宮廷の守護を名目とする扈衛廳の軍官だが、実際には仁祖反正の功臣配下の軍人であった。司圃署は宮廷で食用する野菜を栽培、管理する役所で、別提はその責任者である。その異母兄の梁應漢は折衝將軍（武官正三品上）、僉知中樞府事（中樞府は元来は軍政、宿衛などを司る機関であったが、後期には特に所管にない堂上官を待遇する名目だけのものとなった）、二代目の梁廷燦は庶民の医療機関である惠民署の生徒（見習い）、三代目の梁學魯は、宣略將軍（武官従四品下）、行忠武衛副司勇から、最後は嘉善大夫（文官従二品下）、同知中樞府事になっている。第四代の梁鳴國は、役所の必要物資を調達する宣惠廳の書吏であった。
なお梁應民を除いて、彼の子孫はすべて閑良を経験している。閑良とはもと無官の有閑階級を指したが、粛宗22年（1696）以後、制度化され、科挙の武挙受験者を閑良とよび軍役を課し、主に中人階級の武官名となった。
住所は梁應民以後、西部盤石坊の巡廳契または米廛下契（ソウル市中区巡和洞付近）であったが、梁鳴國が中部澄淸坊古禮洞契（ソウル市鍾路１街付近）に転居（1828）、さらに西部仁達坊內需司契（ソウル市鍾路区內需洞、1834）、西部仁達坊內行廊契（ソウル市鍾路区弼雲洞一帯、1837）、西部積善坊司醞洞契（ソウル市鍾路区積善洞、1840）へ転居している。
以上、梁氏は軍人から身を起こした中人階級で、後に文官の雑職に就き、特に三代目の梁學魯が従二品下、同知中樞府事に出世したことにより、経済的にも裕福になったのではないかと想像される。四代目の梁鳴國が、より王宮に近いソウルの一等地に転居できたのは、おそらくそのためであろう。